本が売れない時代の届け方。ベストセラー編集者に聞く。
出版社名で本を買う読者はいない。『拝啓、本が売れません』特別編①
■ゆとり作家、ご褒美をもらう
2018年5月某日。平成生まれのゆとり作家・額賀と担当編集・ワタナベ氏は、渋谷に降り立った。
ワタナベ氏が言うご褒美とは、「『拝啓、本が売れません』で行きそびれてしまったところへ取材へ行っていい」というものだった。
『拝啓~』の中で、私とワタナベ氏は、
●元電撃文庫編集長、ストレートエッジ代表取締役社長の三木一馬さん
●さわや書店フェザン店・店長の松本大介さん
●株式会社ライトアップ・Webコンサルタントの大廣直也さん
●カルチュア・エンタテインメント株式会社・映像プロデューサーの浅野由香さん
●ブックデザイナーの川谷康久さん
……といった錚々たるメンバーに「売れる本をつくる方法」を取材して回った。しかし、当然ながらさまざまな理由から取材に行けなかった人や会社も存在する。
渋谷にやってきた私達が辿り着いた株式会社ピースオブケイクも、そのうちの一つである。
■ピースオブケイクってなんだ?
会社名は知らなくても、ピースオブケイクが運営している「cakes(ケイクス)」や「note(ノート)」は聞いたことがある人も多いはずだ。
cakesは経済、文化、芸能、海外情報といったコンテンツを提供するデジタルコンテンツ配信プラットフォームだ。2万点近い記事を定額読み放題で楽しむことができる。ベストセラー作家、漫画家、人気ブロガー、アーティスト、学者など、多様な肩書きを持つ執筆陣が、日々さまざまな記事をアップしている。
noteは、クリエイターが文章、写真、イラスト、音楽、映像などの作品を投稿することでユーザーと繋がることができるウェブサービスだ。クリエイターがファンと交流するだけでなく、コンテンツの販売も可能なのが面白い。
noteを活用すれば、作家は出版社を通すことなく読者に直接作品を届けることができる。本が売れない時代を生き抜くためのビジネスモデルが、もしかしたらここにあるかもしれない。
そんなことを考えながら、私とワタナベ氏はピースオブケイクのオフィスに足を踏み入れた。